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細田監督インタビュー第1弾公開!

  • ――まず細田監督がアニメ版「禍つヴァールハイト」に参加することになった経緯を教えてください。 以前から知り合いだったプロデューサーに「何か一緒に仕事しましょう。どんなアニメをやりたいですか?」と声をかけられたんです。そこで「自由に作れるものがいい」と答えたところ、KLabさんのゲーム「禍つヴァールハイト」をアニメ化するという話を紹介してもらい本作に関わることになりました。
    KLabさんとアニメの方向性を対話をしていく中、ひとつの道筋として、ゲーム側もあえて介入しすぎず、アニメの自由度とクオリティを高めるために一定の距離感を意識すれば、今まで見たことのない、ゲームとアニメのリンクが見いだせるのではないか、という話になり、ゲームとアニメの時間軸の差である、「20年」というのがアイデアとして出たのです。
  • ――その段階では、アニメ版の大まかな内容は決まっていたのでしょうか? いや、決まっていませんでした。だから自由に作っていい作品として紹介してくれたんでしょうけど。それでゲームをプレイさせてもらったところ、設定はしっかりとあるもののストーリーよりはゲームシステムを楽しませることを重視した作品だと感じました。そのためゲーム本編をそのままアニメ化するのではなく、そこに至るまでのオリジナルの物語にしたほうが、アニメ単体でも楽しめるし、ゲームのプレイヤーにも興味を持ってもらえる作品になるのではと提案させてもらいました。
  • ――それでアニメ版の舞台が、ゲームでは“光”の落下によって帝都が大火に包まれるという設定のあった20年前になったんですね。 はい。その提案を快諾してくれたKLabさんから細かな設定や企画書をいただいて20年前の話を膨らませていきました。ちなみにそれらの資料にはゲームをプレイしていて気づかなかった設定や反映されていない設定もあったので、そうした要素もアニメ版のシナリオでは盛り込んでいます。
  • ――ゲームとアニメでは媒体が異なりますが、どんなことに注意して制作されているでのしょうか? 僕は理屈っぽい性格なので、ゲームの世界観をアニメで描くにあたってのローカライズには気をつけています。例えば自分の身長より長いような大剣を背中にかついで街を歩いているキャラクターがいるとして、システム重視のゲームだと見栄えがよくて“アリ”かもしれませんが、きちんと社会が構成された世界を描くアニメだと不自然に映りますよね。だからアニメでは大剣ではなく中世で使われていたショートソードやバスタードソードを持たせるとか。
  • ――確かに。「禍つヴァールハイト」の場合は何かありますか? パッと思いつくのは車でしょうか。KLabさんからは古典的なT型フォードみたいなフォルムのイメージをいただいたのですが、時代背景的には合っていても、物語中でオフロードを走らせるには違和感がある。だからオフロードカーも参考にして設定したり。そんな風にアニメで描くにあたって不自然さがなくなるよう心がけています。
  • ――時代背景という話がありましたが、具体的にはどれくらいの年代のイメージをお持ちですか? シャーロック・ホームズが活躍していた1900年前後くらいでしょうか。車があって、街ではガスや水道のインフラも整備されている。中世というよりは、ファンタジー世界にそれほど発達はしていないものの機械文明が混じっている……くらいの感じです。
  • ――そうした世界観が色濃く出る背景も見どころになりそうですね。 背景の設定に関してはこだわっていますよ。アニメ制作ではよくあるんですけど、数カットしか登場しない場所も美術設定を担当されている方に発注してしまい、作らなきゃいけない美術の点数が多くなりすぎてパンクしてしまう。今回はそれを回避するため、数カットしか登場しない場所は僕を含めて社内の数人で描いて、何度も登場するような場所は美術設定の方にしっかりと作っていただく。そんな風に作業を分担することで背景美術の点数は爆発的に多くなっています。

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